結論から言えば、どちらも大事ではないか。
昨今は、「まず顧客ありき」全盛だ。決してマチガイではない。
「まず顧客ありき」。これを「マーケット・イン」とも言う。
とても簡単に言えば、「ウチの商品はいいですよ!」、
「わが社のサービスは最高です。」、
「ですから、契約してください。使ってください。」とはならないのである。
「まず商品ありき」は「プロダクト・アウト」とも言う。
「アウト」なのである。
「まず顧客ありき:マーケット・イン」とは、
製品やサービスを創る際にも、提供する際にも、
消費者やユーザーの視点で考え創りあげ、
販売の仕方もより顧客視点にスキームを組み立て提供することだ。
つまり、顧客が求めているものを創り、
求められている提供(流通・決済など)の仕方を用意することだ。
顧客視点に合わせているから、とても売りやすいという視点だ。
消費低迷の現状だからこそ、顧客ニーズにシンクロすることが大事だ。
「マーケット・イン」を更に深めた考え方として「カスタマー・イン」がある。
例えば、オーダーメイド・スーツやマンツーマンの家庭教師や英会話教室など。
カスタマー・インの考えが生まれたのは、
企業側が消費者・ユーザーの財布の紐がかたくなって久しいのに、
裁ききれていない在庫を抱えつつも、
相変わらず、求められていない商品を持ち続け、
伝わらない広告や販売の仕方を続けているという背景がある。
そのような中、【顧客視点が重要】とかなり騒がれている。
売れる広告支援の弊社も、ずっと徹底してそう言い続けている。
それは既存の商材・サービスを広告する上で欠かせない考え方だからだ。
しかし、商材やサービスを1から開発していくモノ作りの場合は、
必ずしも、この限りではない。
顧客の好みに合わせたからと言って、
数ヶ月で消えていくようなポリシーのないメニューに、
経営資源を費やすのは辛いものがある。
例えば、清涼飲料水もとても商品寿命が早いものがある。
数ヶ月で市場から消えてしまうものもある。
パソコンなども、大体は数ヶ月で中古扱いだという。
そして、新品パソコンは利幅がとても薄い。
ここ数年は中古でパソコンを買っても、随分と良いものが買えるようになった。
新品と大差ない。安くて良いパソコンが手に入りやすくなった。
競争が益々激化する背景で、闇雲に顧客の声に迎合するだけでは、
売れ続ける商品やサービスの新しい発想や開発はできないのではないか。
マーケット・インにほころびが出ていないわけではないのだ。
だからといって、全く顧客の声を無視しろ、ということではない。
いい加減、「難しいことはわからん。」、「シンプルが一番」と言って、
思考停止モードに逃げるのは止めようではないか。
マーケット・インもプロダクト・アウトも、
どちらも実践に必要な考え方なのだ。
画期的な商品やサービスなら、顧客は知らないし考えにもない。
認知されるまでは理解どころか想像もしない。
知らないのだから当然だ。
その顧客の声に合わすだけでは、
限られたパイの血みどろの奪い合いになるのではないか。
イノベーションとは「技術革新」という意味もある。
顧客の声に迎合するだけでは、決して生まれないものも多いではないか。
そもそも、マーケティングとは意味合いが広く「需要の創出」でもある。
これは「顧客ニーズの新しい開拓」ではないか。
限られたパイの奪い合い。
席とりゲームから脱出するには、顧客ニーズ開拓への挑戦も一考である。
だが、これだけに全てを費やしていては、とてもリスキー極まる。
どんなに斬新で社会性もあり意義の深い商品やサービスでも、
世に認知されるまでは、相当の年月と労力、資金を要する。
その前に資金ショートしてしまっては元も子もない。
第一、どれほど検証してリサーチしたとしても、
現実に売れなかったらどうするのか。
だからこそ、既存ビジネスを伸ばしながら土台を固めつつ、
新しい顧客ニーズへの挑戦を行っていくのである。
長期戦略だけに依存しては、とても危うい。